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2020年03月02日(公開: 2019年07月25日)

5Gで動画広告はどう変わる?市場動向と成功のノウハウを徹底解説

国内動画広告市場は急成長を続けており、インターネット広告市場の10%以上を占めるまでに拡大しています。その背景にはスマートフォン(以下、スマホ)の普及と通信回線の速度の発展が関係しています。そして、2020年に「第5世代移動通信システム(以下、5G)」の商用化が予定されています。ここで見逃されがちなのが、5Gと動画の関係です。動画広告活用の現状と課題、そして5G時代に通用する動画広告クリエイティブを解説します。

カクテルメイク カスタマーサクセス責任者 毛利直矢

5G時代の到来

インターネットの変遷を振り返ると、2000年代では、個人のインターネット普及率が37.1%から78.0%まで伸び、多くの情報がオフラインからオンラインへ置き換わりました。ADSLや光回線というインフラの整備が大きく貢献し、誰もがインターネットを利用する「インターネットシフト」が起きました。

インターネット利用者数及び人口普及率の推移(個人)
(出典:統計調査データ 平成21年「通信利用動向調査」 報道資料発表 総務省

 

2010年代では、東京地区でのスマホ所有率が9.8%から82.2%に上がるなど、個人で通信デバイスを所持し、あらゆる情報をスマートフォンから得ることができる環境になりました。これは「スマホシフト」と理解できます。このように、インターネットでは、10年周期で大きな波が起きています。

 

そして、次の10年のキーワードになるのが「5G」です。インターネットが当たり前のように使えるようになるインフラの変化、インターネットに常時つながっていられるハードの変化、その土台の上に、インターネットがより豊かになるソフトの変化が次の10年に起きようとしています。

これまで通信環境が良くなかったため、テキスト中心の伝達手段しか持ち得なかった情報も、5Gによる通信速度の向上で、データ容量に左右されなくなるため、動画などのよりリッチなコンテンツで伝えられるようになる情報の伝達方法の変化、「コンテンツシフト」が起きようとしています。

5Gの3つの特徴

まず5Gの大きな特徴は3つあります。1つ目は「超高速」で、通信速度が4Gの毎秒1ギガビットから5Gでは毎秒10ギガビットに向上し、2時間の映画を3秒でダウンロードできます。インターネットにつないで視聴していた動画が止まったり、音声が途切れることがなくなります。

2つ目は、「超低遅延」で、4Gの10ミリ秒(1/100秒)ほどの遅延から5Gで1ミリ秒(1/1000秒)ほどの遅延に短縮され、遠隔地のロボットのリアリタイム操作ができるくらい、ほぼ通信の遅延を感じさせなくなります。インターネット回線のビデオ通話が数秒遅れたりすることもなく、写真や動画をスマホ内ではなくクラウドに保存しても待ち時間なく見ることができるようになります。

3つ目は、「多数同時接続」で、5GであればスマホやPCだけでなくカメラや家電なさまざまなデバイスがインターネットに接続できます。

5Gは新しいSNSを生む?

現在でも多くの動画系サービスが存在していますが、テキストや画像がメインのサービスと比べると、動画はデータ量が飛躍的に大きくなります。そのため、動画を長時間見るとスマホのバッテリーへの負荷がかかります。また、通信コストの面でも、通信制限の制約があるため、動画の視聴時間を制限していたり、LIVE映像を見る場合や動画のアップロードやダウンロードはWi-Fi環境にするなど工夫しているスマホユーザーは珍しくありません。

今後、5Gの活用が始まり、通信の高速化が起きるとバッテリー負荷の軽減はもちろん、通信制限を気にする必要のない通信コストの安いプランが当たり前になり、誰もがどんな環境や場面でも動画の視聴を当たり前にできるようになります。

これまでテキストや画像がメインだったコミュニケーションが動画に変わる可能性もあります。TikTokやInstagram Storiesになれている若い世代は、すでにテキストや画像よりも動画でのコミュニケーションを好んでいます。5G時代に新世代SNSが現れ、新たなコミュニケーション手法が生まれることも予測されます。

5G時代は、オンラインだけでなく、オフラインでの動画の活用が広がります。JR東日本は山手線を皮切りに車内広告のデジタル化を進めています。E235系では、窓の上にずらりとデジタルサイネージが並んでいます。以前のような宙吊りやステッカーのようなテキストと画像で構成された広告は見当たらなくなっています。電車以外でもタクシーやエレベーターのサイネージなど今後は多様な場所で動画の活用が進んでいきます。

動画広告市場、5年後には約5,000億円規模に

2019年の動画広告市場は昨年対比125%の2,312億円に達する見通しで、2020年の5Gの商用化もあり、今後はさらなる動画広告市場の拡大が推測され、2024年には4,957億円に達する見込みとなっています。 拡大の大部分を占めるのがスマホ向けの動画広告であり、昨年対比130%の成長を遂げ、動画広告市場全体の88%にも及びます。

スマホ向けが急進している要因には、全国をほぼ網羅しきった4G回線により、通信の高速化で動画を見ることができる環境が改善されたこと、動画配信プラットフォームであるYouTubeに加え、SNSの普及により動画を視聴する体験が日常になったことなどが挙げられます。

また、Facebook、Instagram、Twitterを始め、各媒体が動画フォーマットに対応したことにより、広告主も動画広告がプロモーションの選択肢になりました。実際に動画広告での成功事例も多く出てきており、試してみるというフェーズから数字や結果を狙っていくフェーズに移行しています。

動画広告市場規模推計・予測(デバイス別)[2017-2024年] (出典:2018年国内動画広告の市場調査 サイバーエージェント

動画広告は使い方、PDCAの回し方が課題

動画広告が一般化したからこそプロモーションで動画広告を扱う課題も見えてきています。

動画広告は静止画クリエイティブに比べると、動きや音声で注意を引きつけられたり、時間軸があるのでストーリー設計ができたりと情報伝達力が高い。その反面、クリエイティブを構成する要素が多いため、制作費や運用リソースが高くついてしまいますし、制作工数も大きくなりがちなためクリエイティブのPDCAの回数が少なくなる傾向があります。

また、事業会社が主要メディアやDSPなどでも動画を配信できるようになったため、どこに配信すべきなのか、逆に判断が難しくなっています。各媒体の特徴と商材との相性を考えて判断する必要があります。

たとえば、認知を獲得したいならユーザー数の多いYouTubeやLINEを選択肢としたり、購入や問い合わせなどの獲得目的であれば、ターゲティング精度の高いFacebookとInstagram、Twitterが有効な選択肢となります。

そして、動画広告の運用も課題となっています。動画広告でも、これまでのリスティング広告やバナー広告と変わらず、配信後の効果測定や検証が重要です。しかし、動画になったとたん、効果測定のやり方がわからないという声を多く聞きます。こういうときは、目的とそれに合致した指標設定が必要です。ブランディング目的であれば、再生回数や視聴維持率やエンゲージメント率などが重要な指標です。獲得目的であれば、CVに関わるCVRやCPA、クリック率などが指標になります。

動画広告成功に必要な2つのもの

動画広告活用でうまくパフォーマンスを出せているところと出せていないところに違いはあるのでしょうか。

現状で言えることは、うまくいっている運用は、圧倒的にクリエイティブに注力しています。Facebookを始めとする媒体でターゲティングの精度が上がったいま、運用パフォーマンスの変数の大半がクリエイティブ勝負になってきています。そのため、クリエイティブを大量に運用できる体制を構築できるかどうかが鍵となります。

運用型の動画広告では、ターゲット属性やマーケティングファネルの段階において媒体やパターン数を決めるため、出し分け用の動画クリエイティブを作成する必要があります。

効果検証によるパフォーマンス改善という点でも、見込みのあるクリエイティブAの一部を差し替えたクリエイティブA’、クリエイティブA“のような感じでABテストを繰り返していく必要があるため、大量のクリエイティブが必要になります。

また、クリエイティブ運用においても、効果検証を無駄なく効率的に行うノウハウやメソッドが必要になります。

クリエイティブの大量作成とそれをさばくノウハウの蓄積が5G時代の動画広告の勝敗を分けることになるでしょう。

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