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2021年09月29日(公開: 2021年09月29日)

マーケティングが変わる!新潮流のキーワード・クリエイティブテックとは?

さまざまな業界でのデジタル化、DXが進行する今、マーケティング業界においても大きな変革の波が生じてきています。中でも注目しておきたいキーワードのひとつに、「クリエイティブテック」があります。

動画マーケティングやデジタルマーケティングに携わるなら、新潮流を読み解く鍵として、ぜひ知っておきたいこのクリエイティブテックについて、今回は詳しくご紹介し、それによって拓かれる広告の未来についても考えていきたいと思います。

クリエイティブテックとは

クリエイティブテック(Creative-Tech)とは、クリエイティブとテクノロジーの掛け合わせによって生み出された造語で、従来のクリエイティブ制作におけるプロセスを一種の型として整理し、効率的な自動化を図りつつ、ユーザーファーストで価値のある最適化を施したものとするなど、効果向上と省力化の両方を叶えるテクノロジーやサービスのことを言います。

広告業界で先に浸透しているワードには、アドテック(Ad-Tech・アドテクノロジー)がありますが、こちらは主に、インターネット広告領域における広告の配信やターゲティング、媒体掲出の一元管理、効果測定、ユーザーの行動追跡などの技術に対し、用いられる言葉です。いわば「どの広告をどのタイミングで誰に届けるか」を効率良く最適化し、運用を改善するテクノロジーとまとめられるでしょう。

このアドテックも日々進化を続けており、もちろん重要な意義を持つもので、賢く活用することが不可欠ですが、クリエイティブテックはさらにそのシステムの上で機能する広告コンテンツ、顧客の興味関心を喚起し、心に響く、印象に残るコンテンツそのものの制作課題を解消するテクノロジーなのです。

メディアやコンテンツが多様化し、情報があふれる今日では、ただ露出を高めてもターゲット顧客の心をとらえることは難しく、あらためてクリエイティブの力が問われるようになっています。単純なインパクトや接点の増加、頻度の上昇だけを追求しても、自分には無関係、うるさい、邪魔と悪印象を与えてしまっては逆効果になりかねません。企業目線で広告を情報として、型にはまったクリエイティブで押し付けても、一般消費者など顧客には嫌われてしまうばかりです。

顧客とのコミュニケーションを悪化させ、ブランド毀損を引き起こすような広告の掲出に、膨大な手間と費用をかけるのは、全くのナンセンスとしか言いようがありません。ミスマッチを減らし、魅力ある多彩で質の高いクリエイティブにより、タイムリーな情報を届ける、そうしたアプローチへ今すぐ転換することが必要です。

しかし今日のプロモーション施策は多様化と複雑化を極め、トレンドのSNSプラットフォームなど次々に新しいメディアが誕生、顧客のライフスタイルやリテラシー、志向などもスピード感をもって変化し続けています。こうした動きをキャッチアップし、それぞれの顧客コミュニケーションを最適化するための個別化を進め、複雑に並行するアプローチの管理、効果分析・リサーチを実行し、PDCAサイクルを素早く回す……これら必要なマーケティング業務を一手に担っていては、作業時間がいくらあっても不足する、そうした事態に陥るのも無理はありません。

結果として、本来重要なクリエイティブ制作に十分な時間を割くことができない、顧客と向き合う余裕を失ってしまうといったケースが非常に多いのです。そしてこの問題を解決する力こそ、クリエイティブテックに期待されているものなのです。

クリエイティブテックが行える業務

広告のクリエイティブには、さまざまなタイプのものがあります。広告テキスト、バナーの画像やコピー、静止画純広告、タイアップ記事コンテンツ、動画、ランディングページ・ホームページなど、アイデア次第でさらに多様化させることも可能でしょう。基本的なテキスト、キャッチコピー、静止画画像、動画といったものだけでも、掲出先メディアと運用方法の組み合わせにより、多種多様なクリエイティブとして生み出すことが可能です。

これらの制作においてクリエイティブテックが担える業務としては、やはり単純作業がメインになります。創造的部分・核心部分は人が担当し、膨大なデータを基にした処理や、単純ながら人の手で行っていると手間と時間のかかる工程を、テクノロジーの力によって自動化するというスタイルです。

例えば、大量のデータから興味関心を喚起しやすいコピーを導き出す、ターゲットとなる顧客層に最適なクリエイティブ素材を自動生成するといったものが挙げられるでしょう。AIなど最先端のテクノロジーを導入したクリエイティブテックでも、人の心の動きや感情の深さを考慮し、物語性のある動画をゼロから完全に自動で作成するといったことは、まだ現実的ではありません。

それよりも制作プロセスの中でも単純作業にあたる部分、効率と迅速性が求められる、ファネルで言えばある程度下の領域に位置する業務を担わせるのが適当です。

広告クリエイティブの領域では近年、より多くの情報量を、豊かな表現力によって印象に残るかたちで伝えやすいこと、誰が見ても直感的に内容を理解しやすいことなどのメリットから、動画がメインストリームになりつつあります。背景には高速なネット通信環境が普及し、スマートフォンなどモバイル端末を中心に、人々の生活の中にも動画視聴体験が浸透したことがあり、狙った層へダイレクトに訴求しやすい動画広告が、デジタルマーケティングにおいて頻繁に用いられるようになりました。

消費行動への影響力も強いSNSとの相性も良く、拡散効果も高いものが見込めるため、バズる動画広告制作を目指す傾向は年々高まっています。

一方でクリエイティブとしての動画は、制作に手間がかかるのも事実です。そのため、この動画制作領域におけるクリエイティブテックサービスの開発・提供も進んでおり、訴求したいメッセージから動画の素材を自動生成するものや、逆にテキスト・コピーや静止画など素材を読み込ませることで複数の動画を自動で生成するものなどがあります。

また、過去に効果の高かったクリエイティブのデータから、より優れた成果が見込める動画クリエイティブを量産したり、動画から音声を認識し自動でテロップを作成・挿入したり、候補となる複数動画の効果検証・テスト作業、バージョン管理やプレビュー、制作チーム内でのやりとり、クリエイティブのライブラリー管理などを一元的にサポートするプラットフォームなど、属人的作業・事務的単純作業に半自動化・効率化をもたらすツールも増えています。

このほか、タレントやキャラクターなどを起用した実写撮影をベースとする動画制作では、キャスティング費用や編集費用がかさみやすく、完成までにかかる時間と労力も膨大になるほか、権利関係やイメージの変化に伴うマイナス効果の発生リスクなど、作成ハードルが高くなりやすいことから、CGによる架空のモデルを用いた広告の量産化、制作の効率化を進める動きなどもあります。

動画以外に、マーケティングデータやブランディング戦略のデータを学習したAIが、自動でコピーライティングを行う、設定キーワードに合う広告文章を自動生成するといったテキスト関連の制作支援、作業簡略化を叶えるクリエイティブテックもみられてきています。

クリエイティブテック導入のメリット

クリエイティブテックは、マーケティング業務のさまざまな課題を解消し、より高い効果を生む施策の実施・実現へ導いてくれる力を持っています。導入メリットは多岐にわたりますが、主なものをご紹介しましょう。

時代にマッチした多様なクリエイティブの大量生産

人々が接するメディアやコンテンツが多様化し、人々の嗜好も細分化されていく中、それぞれに適したかたちでブランドメッセージや情報を伝える多様なクリエイティブが求められています。日々進化する手法で、さまざまなコンテンツと情報があふれる環境にあって、対象へと確実に届く、埋没しないコンテンツとするには、従来の型にはまらない角度でアプローチするクリエイティブとすることも重要です。

こうしたバリエーションの豊富さと斬新さを、量産するクリエイティブで維持・確保することは容易ではありません。そうした優秀な人材を次々に投じていくことは難しく、限られた人数で動かしていくことが一般的ですから、人間の思考のみで生み出せるアイデアには一定の限界があります。

しかしクリエイティブテックを導入すれば、テクノロジーが提案する思わぬ角度やアイデアを活かすことができ、人間による作業と組み合わせれば、より多様で効果的なクリエイティブを生み出しやすくなります。さらに量産化はテクノロジーの得意とするところですから、時代が求める斬新なクリエイティブを、よりユーザーファーストな個別最適化を進めたクリエイティブを、効率良く大量に生み出すことが可能となります。

制作スピードとPDCAサイクルの回転速度向上

人々を取り巻く環境は絶え間なく変化し、社会やビジネス・市場の動くスピードもこれまでになく速いものとなっている現代においては、タイムリーに鮮度の高いクリエイティブを、ターゲットへと届け続けることも非常に重要です。

高品質なクリエイティブを丁寧に作ることも大切ですが、完成までに膨大な時間を要し、提供される頃には最適な露出タイミングを逸しているのでは、マーケティングとして成功しません。またどんなに優れたクリエイティブであっても、長く同じ物が使われていたのでは新鮮味に欠け、ユーザーからも無視されるコンテンツとなってしまいます。クリエイティブは鮮度を重視し、常に刷新して届けるべきものです。

そのためには制作における生産性と効率性を高め、迅速な完成を目指す必要があります。クリエイティブテックは制作プロセスにおける煩雑な作業、時間と人手のかかる単純作業をスピーディに、自動化するなどしてサポートする力を持っていますから、導入前に比べると、圧倒的な速さでクリエイティブを制作、ターゲットへと届けることができるようになります。

また、既存のクリエイティブに対する顧客などの反応を計測し、それに基づいた改良を加える、新たなクリエイティブ制作に活かして新たな完成物へ差し替えるといったPDCAサイクルをスムーズに回すこともマーケティングにおいて非常に重要ですが、クリエイティブテックはこの回転速度をアップさせ、的確に、迅速に回していくことにも役立ちます。

制作コストの低減

人が稼働する作業時間を減らし、半自動化されたプロセスとすることで、制作コストを大幅に低減させることができます。高品質なクリエイティブ制作を行うには、技術力のある人材が必要です。消費者インサイトを深い次元まで分析するスタッフ、デザイナー、コピーライター・ライター、プログラマー、カメラマン、編集者など、それぞれのスペシャリストを育成し、社内に人材として持つことは一般に難しく、業務委託や派遣・外注サービスなどを用いるならば、それだけ費用がかかります。

全ての工程を人の手に頼り、質の高いクリエイティブをスピーディかつタイムリーに、できる限り量産して発信していこうとすれば、人件費にサービス料金、消費財などその他諸費用と予算は膨大に膨れ上がってしまうでしょう。複雑に組み合わされた現代のマーケティングとして、高い効果が見込める高度な手法による展開を試みた場合、さらにかかるコストは高くなります。

際限なく費用をかけられるのならば、いくらでも方法はありますが、それではビジネスにおけるマーケティングとして成り立ちません。費用対効果を考えた広告展開が必要であり、コストの低減は重要な課題です。

こだわるほどに費用がかさむ傾向にあったクリエイティブ制作のプロセスにおいて、質を下げることなく、大幅にコストダウンを図れることは、クリエイティブテック導入の非常に大きな意義であり、メリットと言えるでしょう。

テクノロジーの活用で従来の制作にかかっていたコストを削減できれば、その分を商品やサービスそのものの改善に充てたり、市場競争力のあるリーズナブルな価格設定へと反映させたり、顧客コミュニケーション活動での還元を増やすなど、さらなるビジネス成長やファンの醸成につなげられるようにもなります。限られたリソースを賢く使う、そのためにクリエイティブテックは大いに活用できるものとなるのです。

クリエイティブテックを提供するサービスやプラットフォーム

アドテックだけでなく、クリエイティブそのものの重要性が再認識されるようになり、マーケティングの新潮流としてクリエイティブテックへの注目度が高まったことから、この分野に参入する企業も多くなってきています。

Oracleによる「Oracle CX Unity」のようなプラットフォームや、Googleの広告自動化、Facebookのダイナミッククリエイティブなどは、大手によるクリエイティブテックの例として挙げられるでしょう。海外サービスでは、デザインプラットフォームの「Canva」や各種SNSにコンテンツを自動で最適化する「relaythat」も注目されています。

国内では、リチカの「リチカ クラウドスタジオ」や、電通の「AICO」や「アドバンストクリエイティブメーカー」など、それぞれ多様な角度からクリエイティブテック関連のサービスを提供しています。

まとめ

いかがでしたか。マーケティングの手法は日々進化し、最先端テクノロジーの活用から、多くの従来における不可能が可能へと変わってきています。中でもクリエイティブテックは、あらためて最も重要なクリエイティブを見直し、その質を効率良く追求するものです。それはユーザーや顧客と広告、ひいては社会と広告の関係性を、より豊かで理想的なものへと導く優れたソリューションとなるでしょう。マーケターの働き方改革や、小規模ビジネスの飛躍的成長にも寄与すると考えられます。

限られたリソースを賢く使い、今あるマーケティング課題を解消するための、また、広告活動を最適に進化させるための大きな一歩として、ぜひクリエイティブテックの導入を検討してみてください。

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