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2021年09月29日(公開: 2021年09月29日)

コロナで海外マーケティングのトレンドに大きな変化?!気になる実態を知る

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック発生は、人々の暮らしをあらゆる面で変化させるものとなりました。直接訪問したり、展示会を開いたりすることがきわめて困難になるなど、ビジネスとしてマーケターがとる営業スタイルを見直さねばならない状況に追い込まれたことはもちろん、顧客企業や消費者の意識や行動も、それまでとは全く違う傾向を示すものになりました。

仕事のあり方が変わり、日常の暮らしにおいても、ソーシャルディスタンシングを保った行動、対面を避けたオンライン接触、非接触コミュニケーションが急激に増加、自由な移動は制限され、多くの人が集まるイベントは軒並み中止、それまでの日常はもはや全くの過去となり、新しい日常が生まれつつあります。

こうした人々のライフスタイルや価値観における大きな変化は、当然購買行動も変化させ、マーケティングのトレンドに多大な影響を与えるものとなりました。今後はここを転換点として、新時代のマーケティングが普及・進展する可能性も大いにあるでしょう。

そこで今回は調査統計資料をもとに、海外で確認されているマーケティングの市場変化や最新動向について、分かりやすく解説します。

マーケティングの役割の重要性にみられる変化

今回参考としたのは、最高マーケティング責任者であるCMOへのアンケートを実施し、その分析結果と統計データを公開しているThe CMO Surveyの2021年版、「2021 CMO Survey」です。

まず、企業がコロナ禍でマーケティングの役割をどうみるようになったかについてですが、感染が広がった2020年6月には、全体の62.3%の企業が過去1年間でマーケティングの重要性が以前よりも増したと回答していました。さらに2021年2月になると、この値は72.2%にまで上昇、コロナ禍でこそマーケティングの重要視傾向が進行したことが分かりました。

企業の属性で内訳をみると、とくにB2Bサービス企業の増加率が76.6%と高く、従業員数や売上高では、いずれも中堅規模の企業で最もマーケティングを重要視するようになっています。業種タイプでは、インターネットからの売上が多くを占める企業で80.0%と高い傾向にあり、やはり外出自粛やロックダウンなどでオンラインサービスの需要が増加、関連する領域でのマーケティングが積極的に行われたとみられます。

このような変化から、マーケターの楽観度は、新型コロナ感染拡大前で100点満点中の60ポイント前後で推移していたところ、2020年6月には50.9にまで急落、これを下回るのは世界的不況に見舞われた2009年の2月における47.7ポイントのみという記録になりました。しかし、2021年2月には平均66.3ポイントにまで大きく上昇、30.3%の増加率で、調査開始以来3番目に高い値となったそうです。従来型の対面営業や広告作成、イベント実施などが感染拡大防止の観点から実施不可となり、いったんは急速に市場全体が冷え込んだこと、しかしその後は新たな手法へとシフトしていくことで、むしろ市場の空気が急速に楽観的方向へと向かい、現在に至っていることがうかがわれました。

コロナ禍のマーケティングでは何が目指された?

アプローチの変更を余儀なくされたコロナ禍で、マーケターが何をとくに目指して活動したか調べた結果では、2020年6月時点の場合、顧客とのつながりによるブランド価値の構築が33.0%でトップ、既存顧客の維持が32.6%で次点となっていました。2021年2月においても、順位ではこれら2つがトップ2となりましたが、新規顧客の獲得が3位で20.8%、マーケティングにおけるROIの改善も7.4%になり、これらは2020年6月時より大きく増加、それぞれ48.6%、105.6%もの増加率を記録しています。

従来型の顧客コミュニケーションが絶たれた直後は、なんとか顧客離れを防ごうとする守りの姿勢が目立ち、企業としても生き残ることが重視されていたものの、直近ではより積極的な攻めの姿勢に変化、新規開拓と利益率の向上を目指す方向性に変わったといえるでしょう。

こうした攻めのマーケティングが実施されることにより、新規顧客の獲得効果は、2020年6月時点でマイナス9.2%と落ち込んでいたものの、直近1年間では6.3%の増加へと急上昇したことも報告されています。

マーケティングリソースにみる変化

コロナ禍においては、感染拡大を抑止するため、在宅ワークが推奨されるなど、多くの企業で急速なDX(デジタルトランスフォーメーション)がその強い必要性から推進される結果となりました。マーケティングにおいてもその影響は強くみられています。対面営業や集客イベントが行えず、アプローチの機会が限定される中、マーケティング部門はどういった活動へとリソースを移行させたのでしょうか。

担当者に複数回答可で回答を求めた結果、2020年6月と2021年2月のいずれにおいても、トップは「顧客接点におけるより良いデジタルインターフェースの構築」で、2020年6月に60.8%、2021年2月では73.6%がこれを強化していました。2位は商品・サービスをどういった流れで顧客に届けるか、新製品投入時のアクションアプローチをどうするかといった、いわゆるGTM(ゴー・トゥ・マーケット)の「ビジネスモデルにおける変革」で、2020年6月には56.2%、2021年2月には52.4%が選択しています。

製品やサービスにおいてコロナ禍に合わせた開発を進め、新しい提案の拡張を行ったり、新たなパートナーシップを結んだりといった活動も積極的に行われていますが、とくに足元の動きとしては、顧客コミュニケーションを改善するための自動化技術への投資を強化する向きや、データ統合への投資を進める向きが目立っています。このリソース集中傾向の変化は、パンデミックとデジタルの市場や社会における結びつきが強くなる中で進行しており、自動化技術への投資強化ケースは2020年6月から2021年2月にかけて25%増加、データ統合への投資については71%の増加と、より多くのマーケターによって報告されるものとなりました。

デジタルマーケティングのメリットを活かし、新たな地の市場や顧客セグメントへと対象を拡張させる傾向も、この半年間で伸びてきています。全体として、およそデジタル中心の投資へとマーケティングリソースの移行・集中を進める傾向が強まっていると言えるでしょう。

今後のマーケティングリソース投下計画では、いわゆるマスメディア広告など伝統的な広告費セクターは、全体平均でマイナス0.2%と、今後の1年間はやや削減傾向となっています。製薬関連などは10.0%の増加を見込んでいますが、建設工事関連はマイナス8.2%と、まとまった削減を実行する見通しとしていました。これに対し、デジタルマーケティング費用は、全般にさらなる集中投下が進む見通しで、平均14.3%の増加と予想されました。

ブランディング関連は全体平均9.5%の増加と、デジタルマーケティングに次ぐ注力領域となっており、中でもヘルスケア分野では、15.4%の増加が見込まれていました。コロナ禍で関心が高まったヘルスケアに関連の深い事業者は、今後さらに顧客コミュニケーションを深め、自社のブランディングに力を入れていくものとみられます。

マーケティングの費用と効果におけるトレンド

日本国内でも巣ごもり消費が伸長したように、海外でもそうした購買行動の変化がみられ、インターネット販売の売上高が過去最高となりました。とくにB2C企業や大企業における売上の伸びは大きくなっています。先にみたマーケティングリソースとしてのデジタル投資強化と相まって生まれたトレンドと考えられ、新型コロナの影響収束がなお見通せない中、マーケターらはこのオンラインというチャネルを通じ、顧客へ価値を提供することに引き続き注力する姿勢もみせています。

マーケティング活動の重要性がより強く認識されるようになった一方、企業がその費用として注ぎ込む総額をみると、2021年2月にマイナス3.9%の減少を記録、CMO Surveyの調査開始以来最大の減額となりました。しかしその内訳では、デジタルマーケティング費用が11.5%の2桁増となっており、いかにこのコロナ禍でマーケティング投資の性質が変化したかもうかがわれるでしょう。

今後は縮小していた事業活動の再開などから、マーケティング費用の総額も回復見込みで、この先1年では10.1%の増加に転換するとみられています。これにより企業収益に占めるマーケティング費用の割合は13.2%にも達し、過去最高の水準となっていくことが予想されました。

マーケティングのパフォーマンス状況はどうでしょうか。感染の拡大が本格的に始まった2020年6月には、その影響から企業は平均17.8%の売上高減少となっていました。しかし、直近では前年比0.3%のプラスへと転換され、年間でもほぼ横ばいにまで改善しています。純利益でみても、2020年6月には14.7%のマイナスを計上しましたが、直近では2.6%のプラス、利益増となりました。デジタルの顧客チャネルを強化したマーケティングの効果が現れ始め、売上や利益率の改善がみられてきているようです。

デジタルチャネルの中でも、SNSへの関心度はますます高まっており、SNS領域へのマーケティング投資から、かつてない多くのリターンを得ていると分析するマーケターが多数を占めていました。業績全体に対するSNSの貢献度は、新型コロナの影響がみられ始めた2020年2月以降、24%の上昇と急激な高まりをみせています。SNSへのマーケティング費用投資は近年、着実に増えてきていたものの、その効果はといえば2016年以降、ほぼ横ばいを続けてきていたため、今回の変化はやはりコロナ禍ゆえと考えられ、大いに注目される結果となりました。

SNSへの投資割合は、2021年で23.4%と引き続き高水準が見込まれており、デジタルマーケティングの中でのSNSが果たす役割は、これまで以上に大きく、また重要なものとなっていく可能性が高まってきています。

戦略トレンドの変化

マーケティングの戦略面では、どのようなトレンドが生じているでしょうか。コロナ禍前の成長戦略は、主に市場へ既存の製品・サービスをより浸透させていくこと、認知向上に重点が置かれており、全体を100とした時の54.0がこの点に充てられていました。これに対し、新たな製品・サービスの開発は20.5、市場の開拓・開発は14.8、事業多角化は9.3と、あまり戦略上重要視されていませんでした。

こうした戦略傾向は、コロナ禍を経た2021年2月、B2B企業でさらに進む結果となり、成長戦略で既存商材の市場浸透が56.8ポイントとさらにアップしたのに対し、多角化はわずか8.7ポイントにとどまりました。一方でB2C企業は異なった傾向がみられ、既存商材の市場浸透を重点成長戦略に挙げるマーケターは17.7%減少、反対に多角化を挙げるマーケターが31.7%増となりました。事業形態によってマーケティング戦略の重点トレンドに顕著な違いがみられてきています。

また、近年重要なワードとなっているサステナビリティ(持続可能性)や環境保護との向き合い方、マーケティング戦略への取り込み方にも変化が生じています。コロナ禍前においては、地球環境や生態系への悪影響を軽減する施策を、マーケティング上、自社の製品やサービスそのものにおける変更点として加え、消費者にアピールする取り組みを積極的に進めていました。これを重要戦略と位置づけていたマーケターは73%にのぼっていましたが、2020年6月の新型コロナ感染拡大初期には53%にまで減少、2021年2月には55%と2ポイント回復しましたが、なお以前に比べると低い値にとどまっています。

では、サステナビリティへの注力姿勢をなくしたのかといえば、そうではありません。商材そのものの仕様変更などではなく、プロモーション面へとその中心を移し、2020年2月には49%、2020年6月には58%にまで上昇しました。2021年2月では再び45%と低下していますが、パンデミック下で起きたこの変化トレンドは、やはり注目すべきひとつの点であったと考えられます。

プラスチック製から紙製に、使い捨て量産品からアップサイクル品に、などサステナビリティの価値を訴求するためにかかる商品コストの負荷増大による経営圧迫や、そもそも感染対策上パッケージングを簡素化しにくいといった、製品・サービスでの対応が難しくなった状況を受け、訴求ポイントを企業やブランドのイメージなど、プロモーションチャネルへと変更する企業が多かったのではないでしょうか。

まとめ

いかがでしたか。今回は「The CMO Survey」の最新統計調査結果をもとに、新型コロナウイルス感染症が海外におけるマーケティングにどのような影響を与えたか、それによって市場トレンドはどう変化したかなど、注目しておきたいポイントを解説してきました。

世界における新型コロナの収束は未だ見通せず、先行き不透明な情勢にありますが、マーケティングの重要性は確実に増しており、デジタルチャネルへのさらなる注力など、これまで緩やかに生じてきていた変化を加速化するかたちで新たな顧客とのつながり、事業モデル構築が進んできています。アフターコロナやニューノーマルの未来を見据え、グローバルトレンドも意識しつつ、時代の変化に即した、一歩先を行くマーケティングの実践を目指してみてください。

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