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2022年05月09日(公開: 2021年12月06日)

運用型クリエイティブとは?デジタル広告の新しい考え方を解説

デジタルマーケティングの世界は、日々新しいテクノロジーやノウハウが開発され、環境の変化も大きい領域です。そんな中で、近年注目されているキーワードが「運用型クリエイティブ」です。 

この記事では、運用型クリエイティブという言葉の定義や、注目を集めている背景、その実践方法なども含めて解説します。

運用型クリエイティブとは?

運用型クリエイティブとは、デジタル広告で中長期の成果を最大化するために最も成果に影響を与える「クリエイティブ」が、正しくスピーディーに検証改善されている状態を実現すること、またその考え方を指します。イメージとしては「クリエイティブの検証改善が効果的に回っている状態」の実現を目指すことです。

近年、広告においてはクリエイティブの改善がもっとも成果につながると言われています。ニールセンが発表した調査によると、広告を構成する要素の中でもっとも購買に影響するものはクリエイティブであることがわかりました。その貢献度は47%と、ターゲティングやリーセンシーなどとも比べても極めて高い割合で購買に影響しているという結果が出ています。

 “When it Comes to Advertising Effectiveness, What is Key? – Nielsen.” https://www.nielsen.com/us/en/insights/article/2017/when-it-comes-to-advertising-effectiveness-what-is-key/ (アクセス日: 2022年4月22日)

なお、このクリエイティブの需要性についてはほとんど認識されていないことも明らかになっています。ほとんどのマーケターやメディアエージェンシーは、売り上げに寄与するのはターゲティングであると認識していますが、実際のところはクリエイティブがもっとも売り上げに影響力のある要素なのです。


 “Perception Versus Reality: What Are The Key Drivers Of Sales Effect?.”
https://www.westwoodone.com/2021/08/16/perception-versus-reality-what-are-the-key-drivers-of-sales-effect/  (アクセス日: 2022年4月25日)

運用型クリエイティブが誕生した背景

従来までのデジタル広告においては、リーチやターゲティングといった要素が重視されていましたしかし昨今、デジタル広告を取り巻く環境がガラリと変わりつつあります。ここには大きく分けて2つの変化があります。

1つ目が、顧客や顧客接点の多様化です。この背景には、新型コロナウイルスによって、顧客のライフスタイルや価値観が大きく多様化、複雑化したことが影響しています。

たとえば、これまでは一括りにされていた「20代女性」というセグメントであっても、リモートワークをしてるのかしていないのか、子供がいるのかいないのか、そもそも企業に勤めているのかフリーランスなのか、などのライフスタイルの要素がコロナを経て大きく変わってきています。

デジタル広告を取り巻く2つ目の大きな変化は、世界的なプライバシー保護の流れによる、クッキー規制やアプリトラッキング透明性の影響です。これにより、かつてデジタル広告で当然のように行えていたリターゲティングなどの施策を中長期的に継続することが難しくなりました。さまざまな代替技術も模索されていますが、決定的なものはあらわれていない状況です。

このように、従来型のターゲティングが難しくなってきたことで、クリエイティブが今改めて注目されているのです。こうした流れを受けて注目されているのが、顧客一人一人にあわせたクリエイティブの量産、検証、改善を行っていく「運用型クリエイティブ」の考え方なのです。

運用型クリエイティブを実現するための5つのポイント

それでは、どのようなことを抑えれば運用型クリエイティブを実現できるのでしょうか。運用型クリエイティブを行うためには外せない5つの要素があります。それは「メッセージング」「プランニング」「運用体制づくり」「クリエイティブ最適化」「動画+静止画」です。

①メッセージング

広告を配信するために最初にやるべきは「メッセージング」です。メッセージングとは、誰に何を伝えるのかについて仮説を構築することです。具体的には、自社の商品のターゲット、イシュー、メリット、RTB(Reason to believe、消費者が便益を信じる理由)、アクションについての仮説を整理していく行為を指します。

どのようなデザインにするか、からではなく、誰に何を伝えるのかを整理することから始めましょう。ここがきちんと固まっていれば、自ずと広告のデザインや構成要素も決まってきます。

なおメッセージを検討するには、こうしたメッセージ設計用のマス目などを活用することも有用です。気になる方はぜひお問い合わせください。

②プランニング

プランニングとは、何をどの順番で検証すべきかについて正しく計画することです。デジタル広告の検証を行う際にありがちなのが、自社のこれまでの自社広告や競合のクリエイティブを参考にして、なんとなくで広告制作を始めてしまうことです。これでは、広告全体で顧客とどのようにコミュニケーションをしていくのかの設計ができておらず、良いクリエイティブになるとは言えません。

広告のプランニングを行う際は、上流から下流に向かって設計を行うと良いでしょう。具体的には、前項目で検討したメッセージ要素からコピーを検討し、最後にデザインを考えるという順番です。動画広告であれば、冒頭のコピー部分にターゲットを記載し、中盤のボディー部分でそのターゲットが抱えるイシューや与えられるメリットを伝え、最後にRTBを訴求するという順序で設計していくのをおすすめします。

③運用体制づくり

メッセージや検証の順番が考えられていても、きちんと運用が回せる体制が整っていなければ、運用型クリエイティブを実現することはできません。

具体的には、①クリエイティブの量産体制、②広告運用のプランニング体制、③検証改善体制、の3つをどのように実現するのかを整理する必要があります。社内外の関係者の役割分担を明確にし、誰がどこまでを行うのかの共通認識を持っておくことで、その後の運用改善の回しやすさが変わってきます。

④クリエイティブ最適化

大手企業でも意外と達成できていないのが、この広告クリエイティブの媒体への最適化です。クリエイティブ最適化とは、広告を配信するプラットフォーム(媒体)が推奨している、その媒体でのクリエイティブの条件を満たすように制作することです。

動画広告であれば、動画のストーリー構成、広告内の情報量、サイズ、長さ、サウンドの有無などがあげられます。これらの項目は、媒体ごとのユーザー層やその広告をみるユーザー視聴態度、サービスのUXなどを考えながら、最適なものになるよう作成していく必要があります。

なお当社が行った独自調査では、Facebookで動画広告を配信している企業のうち、なんと92%が媒体側が求めるクリエイティブの最適化条件を達成できていないという実態が明らかになりました。媒体最適化を意識した広告配信を行うだけで、他社より一歩リードできる可能性があるのです。

具体例をあげると、インスタグラムでは縦型で、テンポ感がよく、ビジュアルを中心にしたクリエイティブが良いとされています。

一方YDAでは、Yahoo!のトップ画面などを想像するとわかる通り、情報量がとても多い場所に配信されます。また、ユーザーが何秒目から広告を見るのか変わらないため、どのタイミングで見られてもCTAや訴求が伝わるクリエイティブにすると良いのです。そして、Facebook広告は画面占有率が高いため、冒頭にフックとなる訴求を持って来て、きちんとユーザーの注意を引くクリエイティブにすることが大事です。

 “【200社の動画広告を独自調査】 “92%の動画広告は媒体最適化ができていない” と判明(RC総研)” https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000142.000025039.html (アクセス日: 2022年4月22日)

⑤動画+静止画

運用型クリエイティブを実現するためには、動画と静止画の両配信も欠かせません。「動画か静止画か」ではなく「動画も静止画も」という前提で、デジタル広告に望むことが非常に大事です。

その理由は二つあります。まず、あらゆるデジタル広告の媒体において、動画と静止画は配信される枠が異なる場合が多いためです。静止画広告だけを配信していては、動画でリーチできる枠に配信することができず、機会損失に繋がってしまいます。

さらに、静止画広告と動画広告では獲得しやすいユーザーが異なります。端的に情報を伝えられる静止画はすでにニーズが顕在化しているユーザーに刺さりやすく、逆に、その商品の必要性も含めて伝えられる動画では半潜在ユーザーを獲得できるとされているのです。

実際に、動画と静止画で反応するユーザーの重複率は3.7%というデータも存在しています

運用型クリエイティブの事例

運用型クリエイティブを実践して、成果をあげている企業事例をご紹介します。

静止画比でCTR、CVRともに改善

LIXIL株式会社は、YDAからの直販売り上げ向上を目指し、運用型クリエイティブを実践。YDAに最適化したクリエイティブを訴求軸別に量産し、検証。結果、静止画とくらべてCTRは280%、CVRは400%以上になる成果に繋がりました。

デジタル広告から新規来店率が向上

また、広島を中心に展開する株式会社フレスタは、若年層の開拓を目指し、これまでの紙チラシに変わってデジタル広告の施策を開始。スーパーの店舗がある商圏のユーザーに向けて広告のターゲティング配信を実施し、集客効果を測定しました。結果、広告接触した人の新規来店率が1.23倍になるなど成果につなげることができています。

動画広告の勝ちクリエイティブを発見

さらに、スマートキャンプ社は自社が主催するオンラインイベント「デジマフェス」の集客のためにデジタル広告を活用。冒頭の訴求のみが異なる動画広告を配信し、検証を実施。静止画よりもクリック率を向上させることに成功し、また中でも成果の良い勝ちクリエイティブの発見にも繋がりました。

まとめ

デジタル広告は顧客の多様化や、世界的なプライバシー保護の影響をうけて、従来の方法論がそのままでは通用しなくなってきています。

そこで今改めて注目されているのが運用型クリエイティブの考え方です。クリエイティブは、ただ闇雲に作成をするのではなく、メッセージやプランニング、体制などを整えた上で、配信面に最適化したクリエイティブを改善していくことで成果につながっていきます。

クリエイティブの重要性が高まってきているこのタイミングで、ぜひ自社のデジタル広告を見直し、運用型クリエイティブの実践にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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